中小企業診断士が語る!知れば得するノウハウ集

松平 竹央

皆さま、こんにちは。一般社団法人城西コンサルタントグループ(JCG)の松平です。

今回(第16回)は、平成29年1月27日に始まりました、「IT導入補助金」についてご紹介します。この補助金の第一次公募の締め切りは2月28日までということです。本コラムが公開される頃にはすでに申請準備のための日程は厳しくなっているかも知れません。ただし、第二次公募(3月中旬ころ)もあるようですのでこれから検討されるという方でも間に合います。

Vol.16 「IT導入補助金」で攻めのIT活用を始めよう

1.IT導入補助金とは?

IT導入補助金すなわち「サービス等生産性向上IT導入支援事業」は、ITツール(ソフトウエア、サービス等)のサービスを導入しようとする事業者に対して、その事業費等の経費の一部を補助することにより、中小企業・小規模事業者の経営力向上を図ることを目的としています。

我が国の労働力人口が減少する中、長時間労働等が問題となる事件が多くなっています。政府としては働き方改革、ワークライフバランスの実現、健康経営など様々な労働問題に対応するための政策を打ち出していますが、それらは企業の生産性向上と両立するものであることが求められます。

今回ご紹介する「IT導入補助金」は、ITの力を活用して企業活動の生産性向上を促進させるようというものです。
なお、「サービス」という言葉が目立ちますが、補助対象はサービス業だけではありません。製造業、建設業、運輸業、卸売業、小売業、医療法人など、「中小企業等経営強化法」という法律が規定する中小企業者等が広く対象となります。

IT導入補助金のポイントを次の表に示します。正確さよりも簡便さを優先し、簡素化して紹介していますので詳しくは公募要領等をご確認下さい。

対象事業者 日本国内に本社及び事業所を有する中小企業者等
対象となる事業 以下の要件を満たす事業に対して補助を行います。
①日本国内で実施される事業であること。
②事務局が認定した「IT 導入支援事業者」が登録する ITツール(ソフトウエア、サービス等)を導入する事業であること。ただし、交付決定前に契約し、それに伴い発生した経費は補助対象となりません。
補助率 2/3以内
補助対象費目 事前に事務局に承認・登録されたITツール(ソフトウェア、サービス等)が対象。 ハードウェアは補助対象外。 また、交付決定通知前の契約、導入による費用は補助対象外。
公募期間 平成29年1月27日(金)~平成29年2月28日(火)17時まで
※二次公募も行われる見通しです(3月中旬ころより)。
事業実施期間 交付決定以後~平成29年5月31日(水)

上記の事項のうち、上から2つめの「対象となる事業」の②の事項は、これだけでは分かりにくいと思います。そこで、後続の「4.IT導入補助金の申請のポイント」のところで補足します。

2.IT活用の事例

ITを上手に活用すれば、受注を増やしたり業務効率を高めたりすることができそうだ、とは理解できても、具体的にどのようなことがどうすればできるのかについてはピンとこないという方もおられることでしょう。

ITを上手に活用するとはどのようなことなのでしょうか? これにつきましては、経済産業省が公表している「攻めのIT活用指針」が参考になります。社内の業務効率化・コスト削減を主目的とする場合を「守り」とするならば、「攻め」とはITの活用による企業の製品・サービス開発強化やビジネスモデル変革を通じて新たな価値の創出、そしてそれを通じた競争力の強化を目指すものです。
「攻めのIT活用指針」の事例集も公表されています。その中から住宅関連事業の事例をいくつかご紹介します。

事例1 株式会社エントリー 不動産業/神奈川県
テーマ 顧客情報と物件情報と自社の得意領域の交点を見つけ出して成約を実現する、親密なCRM(顧客関係管理)
企業概要 横浜市戸塚区で不動産売買の仲介を行う小規模の不動産事業者
IT活用の 主な内容 ・物件情報と顧客情報の的確なマッチングを図る商談支援システムにより顧客の意思決定を適切に支援しながら成約に至らしめることで他社との差別化を図っている。
・顧客との接客記録データ等を集計・分析するシステムを構築し、的確な事業運営と経営判断に役立てている。
成果 過去5年間の売上げの伸びは約1.9倍に。売却契約は年間6件から17件に増加。

※参照元: 経産省「2015年攻めのIT経営中小企業百選」

事例2 株式会社佐藤工務店 建設業/宮城県
テーマ 建設現場での最新IT技術活用で、安全・安心、業界イメージアップ、人材育成を促進
企業概要 自ら「情報化施工に強い会社」を標榜する中小建設業
IT活用の 主な内容 ・無人航空機(ドローン)による建設現場の撮影写真を 元にした3Dオブジェクト生成というデータ化技術の確立。これにより測量作業の人員削減やリードタイム短縮を実現し、作業の安全性を高めることが可能に。
・タブレットからの携帯電波で制御できる遠隔監視カメラシステムを構築。これにより遠隔地の現場の安全管理、進捗状況確認を限られた人員で実施することを可能に。
成果 ICT機器等の導入前からの売上高の伸びは約1.2倍、利益は約40%増に。

※参照元: 経産省「2016年攻めのIT経営中小企業百選」

事例3  株式会社 エスケーホーム 建設業/熊本県
テーマ IT活用ならではのリアルな仮想住宅展示でお客様の望む姿を提案し、納得のご購入を実現
企業概要 住宅施工、販売、不動産販売業を営んでいるが、同業各社が集客のために活用する「住宅展示場」を持たないことがひとつの特徴。
IT活用の 主な内容 ・同社が開設した「インターネット展示場」では、外観や間取りの紹介だけではなく、外部・内部・設備それぞれの仕様を、顧客に合わせて表示し、建設費の概算見積を行うことが可能。
・また、近県も含めた不動産業者の情報と連携し、土地探しから始める家づくりをテーマにした土地検 索サービスや地域密着型の土地ナビサイト「e土地ネット」を運営。
成果 過去5年間の売上高の伸びは1.4倍超に。福岡証券取引所への上場も実現。

※参照元: 経産省「2016年攻めのIT経営中小企業百選」

本コラムの第3回や第5回でもご紹介したことがあります、経産省の小規模事業者持続化補助金では、販路開拓と合わせて行う業務効率化(生産性向上)の取り組みついても、補助対象となりました。例えば、販路開拓と合わせて行う次のようなIT利活用の取組みは、小規模事業者持続化補助金の補助対象です。

今回の「IT導入補助金」では、「販路開拓と合わせて行う」という要件はありません。この4つの例のような取り組みのみを行う場合や、さらに高度なIT利活用の場合でもIT導入補助金の補助対象となり得ます。しかしながら、IT導入補助金には別の要件を満たす必要がありますので注意が必要です。それを後続の「4.IT導入補助金の申請のポイント」で説明します。

3.IT導入補助金で活用し得るITツール・サービス

例えば、次のようなITツール、サービスを活用(導入)することができます。ただし、ハードウェアの購入経費は本補助金の補助対象ではありませんのでご注意ください。

4.IT導入補助金の申請のポイント

IT導入補助金を活用するための交付申請の流れを次の図で示します。ただし、公式に公募要領で示されている本補助金のスキームはとても複雑なものとなっています。次の図は、交付申請の手続きについてかなり簡略化していますので予めご承知おきください。
なお、スキームが複雑になっているのは、この補助金を利用する補助事業者(中小企業等)の方の実質的な負担を軽減するためでもあります。

IT導入補助金の申請の流れ

(1)「IT導入支援事業者」とは?

今回の「IT導入補助金」では、対象となる事業として、事務局が認定した「IT導入支援事業者」が登録する ITツール(ソフトウエア、サービス等)を導入する事業であること、という要件があることが1つの特徴です。
「IT導入支援事業者」とは、本補助金によって導入されることになるITツール(ソフトウエア、サービス等)を、適切に提供することができる事業者であるのかを担保するため、予め一定の審査を経て本補助金の事務局(一般社団法人サービスデザイン推進協議会)に認定された事業者です。どのような事業者やITツールが登録されているかにつきましては、本補助金のWebサイトで閲覧することができます。
従いまして、本補助金を申請しようとしている中小企業等が以前からお付き合いのあるITベンダー等に発注して生じる経費等は、本補助金の補助対象とはならない場合がありますので注意が必要です。
「IT導入支援事業者」やITツールは、本補助金の事務局Webサイトで検索・閲覧することができます。

(2)中小企業等(補助事業者)自身が申請するのではない

IT導入補助金では、通常の補助金申請とは異なり、中小企業等(補助事業者)自身が申請を行うものではありません。
前述の「IT導入支援事業者」が中小企業等(補助事業者)から申請に必要な情報を収集し、交付申請を代行します。補助事業者の方は自身の事業計画に即したIT導入支援事業者、ITツールをご選択いただき、IT導入支援事業者に申請に必要な書類またはデータをお渡し頂く必要があります。

(3)中小企業等(補助事業者)は、申請様式に基づく事業計画を作成する

IT導入補助金の申請にあたって中小企業等(補助事業者)は、IT ツール(サービス、ソフトウエア等)の導入による業務効率化等の目標を設定し、生産性向上に係る事業計画(申請様式)を作成する必要があります。この事業計画書は、実質的には中小企業等(補助事業者)が選定したIT導入支援事業者と仕様等を協議した上で作成するものとなるでしょう。
また、必要に応じて、専門家等による支援を受けつつ、事業計画を作成することになります。「専門家」とはよろず支援拠点や地域プラットフォーム、ミラサポに在籍・登録のある専門家、またはIT導入支援事業者社内にITコンサルティングの経験があり、その能力を有する者のことをいいます。
この事業計画書は審査され、この審査結果及び評価を踏まえ、事務局は補助事業者の採択・交付決定をします。
審査項目は、本補助金の専用Webサイトから入手できる「公募要領」に掲載されています。

(4)「おもてなし規格認証2017」の取得や「経営力向上計画」の認定取得が
必要になることも

補助金申請額に応じて、「おもてなし規格認証2017」の取得や中小企業等経営強化法に基づく「経営力向上計画」の認定取得が必要になります。これにつきましても「公募要領」に掲載されています。
なお、「経営力向上計画」につきましては本コラムの第9回や第12回でご紹介しています。

このように、このIT導入補助金の仕組みや申請手続きはとても複雑なものとなっています。従いまして、中小企業等(補助事業者)の方は早めにお近くの相談窓口に相談されることをお勧め致します。

5.IT導入補助金の相談窓口

IT導入補助金の専用Webサイトには、お問い合わせ等のためのコールセンター(電話番号)が掲載されています。なお、電話される前にはWebサイトに掲載されている「よくある質問」を必ずお読みくださいということです。

前述しましたとおり、事業計画を作成する場合には、よろず支援拠点、地域プラットフォーム、ミラサポに在籍・登録のある専門家の支援を受けることができる場合があります。
また、お近くの商工会・商工会議所が情報提供等を行っている場合もあります。例えば東京商工会議所では、「東商ICTスクエア」がIT導入補助金に関する情報提供を行っています。

本補助金の活用にご関心のある方は、よろず支援拠点などの機関に早めにご相談されることをお勧め致します。 ご相談される際には、補助金を獲得することばかりを意識するのではなく、そもそも自社の経営課題は何で、ITを導入することで経営課題のどれをどのように解決したいのかという考えを整理しておかれるとよいでしょう。

 

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